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私自身が一つのロールモデルに。資格をもって建物の計画・設計・メンテナンスキャリアを積み重ねる
私自身が一つのロールモデルに。資格をもって建物の計画・設計・メンテナンスキャリアを積み重ねる
JR東日本横浜支社 総務部企画室 今井志帆さんShiho Imai
- 取得資格
- 一級建築士
- わたしの強み
- オン・オフの切りかえ力
- このしごとに必要な力は?
- コミュニケーション力、感謝の気持ち
- 年齢
- 41歳
- 家族
- 夫、子ども二人(小3、5歳)
- 東日本旅客鉄道株式会社
自宅新築がきっかけで、建築士に。駅ならではの複雑さが魅力
高校生の時、自宅(一軒家)を建てることになり、これが建築のおもしろさに気付くきっかけでした。真っ白な紙に次々と線が引かれ、思い描いていた自宅が目の前で出来上がっていくという過程にとても感動しました。私も少し関わらせてもらって・・・まさにドリームハウスでしたね。
大学は建築学科に進学し、大学院修了後に東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)に入社しました。JR東日本に決めた理由は「駅」の設計に携わりたいと思ったからです。日々多くのお客さまが利用する駅は、とても複雑な構造をしています。乗り換える人、通過する人、ショッピングする人。いろいろな人がさまざまな思いで利用する場所なので人の動きは複雑になります。その複雑さを大胆かつ繊細に取り込む計画を考えるとワクワクしました。また新たな事業展開など多くの可能性を秘めた新規ビジネスに関われることも魅力でした。
失敗事例から学び、次に活かす。メンテナンス部署で働いた経験は宝物
24歳で入社し、東京工事事務所という大規模な建設工事を進める部門で働き始めました。そこでは、駅と線路を高架化し、踏切をなくす連続立体交差化プロジェクトに携わりました。同時に、一級建築士の資格取得のための勉強も続け、入社2年目で試験に合格しました。
27歳の時、東京建築技術センターに配属が変わりました。駅舎はもちろんですが、バックヤードにあたるスタッフルームなど中小規模な建物の計画・設計・保守・メンテナンスを行う部署でした。お客さまと直接会話をする機会はあまりなかったのですが、自らが設計した施設をご利用いただく光景を見て、全てのしごとはお客さまへのサービスに結びついているという意識を強く持つことができました。
配属当初は、女性社員は私だけ。私が配属されるために女性更衣室ができたというくらい、男性が主体の職場でした。
しごとは、夜勤もあり体力的にハードでしたね。終電後から早朝にかけて行う保守、メンテナンスのための工事が月に3、4回はありました。
先輩男性社員は皆ベテランばかりで、貴重な失敗事例も数多く経験されていました。たとえば、ゲリラ豪雨があった時、建物の内部が浸水し、電車の運行に影響が出てしまったとか。この失敗は、雨どいの大きさを見直したり、雨水管をあらかじめ屋外に出しておくといった工夫で防ぐことができます。こういった事例や経験が共有されていないのは残念だと考え、私はヒアリングした失敗事例を集めて写真や図面を用いて見える化してみました。鉄道会社にとって安全・安定輸送は全てのサービスの土台です。同じ過ちを繰り返さないためにも、失敗から学び、事前に防ぐ取組はとても大切なしごとのひとつなのです。
失敗事例は建物管理に活かせるアイディアの宝庫。今では社内で一冊の本として取りまとめられていて、私自身これ以降のしごとに携わる上でとても役に立っています。
駅のトイレや待合室。資格取得後、注目の場所の改修・設計に携わる
新幹線待合室の設計や、駅のトイレの改修工事に携われたのはとてもいい経験でした。新幹線待合室の設計は、社内にあまり前例がなかったためコンセプトづくりから関わったんですよ。こだわったのは当時流行し始めていたキャリーバックで移動を考慮すること、また手をつないだ親子が横に並んで歩ける通路幅の確保も意識しました。駅のトイレ改修では、お客さまからたくさんの意見をいただく場所だけに心を砕きました。毎日たくさんの人が使うし、注目されているのです。設計に際しては、メンテナンスを考慮して、汚れにくく掃除しやすいタイルを選んだり、当時はまだ珍しかったパウダーコーナーの設置や、後姿も映るよう二壁に鏡をつけたりと工夫を凝らしました。完成したトイレに「使いやすいね」と声をかけてもらった時は、とてもうれしかったです。
29歳の時、グループ会社の建築設計事務所に出向になりました。ここでは歴史ある古い駅舎のリニューアル設計に携わりました。100年近くに渡り地元住民の方に愛されていた駅舎をどのように残すかがいちばんの課題でした。地元住民や自治体担当者、学識者とも相談し、将来的な街の発展を考慮しながら新駅舎を設計しました。街や住む人にとって駅が大切な存在であることをあらためて感じる機会になりましたね。
子育てはチームを組んで。職場でも、一人で抱え込まない工夫を
私生活では、27歳で結婚、31歳の時に第一子を妊娠、出産し、育休を1年半取得しました。育休中は、横浜市が行っている赤ちゃん学級に参加して、仲間を作りました。しごとを持っている人も多く、しごとの話や復職後の悩みを共有できてとてもよかったです。この時にできたママ友は現在ではまさに同志。今日でもよく連絡を取って支えあっています。
子どもを1歳で保育園に入れて、同じ職場に復帰しました。復帰後しばらくして、横浜支社に異動し、駅やそれに関する建物の計画、改良工事を担当。その後、第二子の妊娠が分かり、第一子の時と同じように育休を1年半取得しました。
しごとをしながら、全ての子育てを一人で抱えるのは無理です。だから、子育てはチームを作って支えあっていかなれければと思っています。我が家の場合、主要メンバーは私と夫、そして遠方に住む祖父母、さらに職場の上司・同僚です。夫とは、曜日交代制のシフトを組み、スマホにて一週間の予定を徹底管理。夜に子どもの体調が急に悪くなった時は、早朝に祖父母に預けに行き、午後から出勤することもあります。職場の上司・同僚も勝手ながら(笑)大事なメンバーの一員です。普段から自分の状態を話し、大事なしごとは自分だけが知っている状態にしないように心がけています。子育て中の私が配属されたことで職場にも変化が生まれています。全体ミーティングは曜日や時間帯が変わり、私が出席できる日時になりました。こうした配慮やサポートは大変ありがたく、改めて周囲に感謝の気持ちを持つと同時に、全力でしごとを行おうと決意を新たにしています。
最も大切にしていることは譲らない。高機能な家電や外部委託を利用して時間を生み出す
子育てとしごとをするうえで大事にしているのは、チームで育児に取り組むことのほか、しごとと家庭のトータルで見て優先順位を決めることです。今一番大事にしたいこと、自分でないと対応できないこと、他の人や物に頼めることに分類します。たとえば日々の取り組みとして、私は夜の絵本読み聞かせと宿題チェック、また子どもとのコミュニケーションは欠かせないと思っているので、帰りが遅くなり夕飯を作る時間がないとなったら、お惣菜を買ったり食材キットを利用したりと積極的に時短に励んでいます。年末など家族全員がそろう貴重な時間では、大掃除は家電に任せ、または一部を外部に委託し、その間に家族でゆったり過ごす時間を楽しんでいます。優先順位はきっと子どもの成長と共に変わっていくと思うので、今後はその点にも気を配りたいですね。
深夜の帰宅や時短ごはんが続くと、子どもに対して申し訳ない気持ちになることもあります。でも、先日、私が残業で家にいなかった日にテレビで電車が遅延しているという情報を見た子どもが、「ママが働いているんだから大丈夫」って言ったらしくて。私、列車運行に直接は関わっていないんですけど(笑)、しごとのことを分かってくれているんだなと思うととても嬉しかったし、誇らしく感じました。
「唯一の女性」部門で、経験をフル活用。広い視野で見れるポジションが目標
現在は、横浜支社総務部企画室にて社外との計画協議を担当しています。ここでも唯一の女性で、女性社員が配属されたのも私が初めてです。しごとの内容としては、駅の橋上化やエレベーターの設置など快適な駅や駅周辺のまちづくりの計画策定となります。行政機関や地域住民の方々とコミュニケーションを図り一緒に計画を進めることも多く、その調整なども私のしごとの一つです。
たとえばエレベーターの設置を検討する時は、自分がベビーカーを押していた経験を思い出し、子ども独特の動きや目線を考えながら安全で利用しやすい計画を心掛けています。私の強みは、建築士を土台とした設計の経験と子育ての両方の経験を持ちつつ、これらのキャリアを活かせる環境にいることかもしれませんね。
今のしごとは社内外の多くの関係者がかかわるプロジェクトで、大変な面もあります。でも、それぞれが思い描くイメージをまとめ、一つの形にしていく過程に大きなやりがいを感じます。職場の理解とフォローを得て、達成感を感じるしごとに関わらせてもらっていることに感謝しています。
今後は経験を重ね、いつかはより幅広い視野で全体を見るしごとがしたいです。女性が働き活躍し続けていくために、変えられることはまだたくさんあると思います。そういった働き方の仕組みづくりや改革にも関わっていきたいですね。
今井さんからのメッセージ
Life & Career History