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男性職場でのびのびと働く。 シーサイドライン初の女性運転士

男性職場でのびのびと働く。
シーサイドライン初の女性運転士

(株)横浜シーサイドライン 新杉田駅 駅務運転員
橘川 みなほさんMinaho Kitsukawa
女性キャリアモデル橘川さん
取得資格
動力車操縦者運転免許(甲種電気車)
わたしの強み
自分から積極的に動けること
このしごとに必要な力は?
コミュニケーション能力、状況把握力、語学力
年齢
21歳
家族
両親、ペット
(株)横浜シーサイドライン

小さいころから鉄道が好き。18歳で(株)横浜シーサイドラインに入社

高校を卒業後、(株)横浜シーサイドラインに入社しました。小さなころから鉄道が大好き。特に車両の外観が好きです。昔の蒸気機関車やミニSLなどがたくさん展示されている青梅鉄道公園によく通っていました。
とはいえ、就活を始めたころは接客業、とくに飲食店が希望で、鉄道会社で働くなんて思ってもいませんでした。でも、なかなか「これだ」と思うところに出会えなくて。そんな時、担任の先生が教えてくれた就職セミナーに行って、 (株)横浜シーサイドラインを見つけました。たくさんの企業ブースが出ているなかで最初に説明を聞いたのですが、その日に説明を聞いた企業のなかで一番「いいな」と思いました。
「いいな」のポイントは質問したことにすぐに答えてくれて、説明会の担当の方が明るく元気だったところ、そして「女性大歓迎!」だったところです。鉄道業は男性職というイメージが強かったのですが、女性専用の更衣室ができたばかりで、気持ちよく安全に働ける環境が整えられていました。女性にも、しっかりサポートしてくれることを知って安心して入社しました。

シーサイドライン初の女性運転士になるまで

女性キャリアモデル橘川さん写真

新杉田駅のホームにて

入社して3ヵ月間は見習い期間。先輩社員から駅係員のしごとを学びました。しごとの内容は、窓口でのお客様対応や改札業務、ホームのご案内など多岐に渡ります。
運転士を目指してみないかと声をかけられたのは、見習い期間が終わったころ。入社した時から、運転士になることを目標にしていたので、お話をいただいた時は、とてもうれしかったです。
運転士になるには、「動力車操縦者」の国家資格が必要です。そのためには、社内の選考試験、国土交通省関東運輸局での筆記試験、技能試験に合格しなければなりません。一つずつクリアしていって、1年ほどかけてようやく運転士になることができます。
まず、社内の選考試験。試験に向けて「運転取扱心得」を一字一句間違えずに覚えました。車輛全体のことはもちろん、運転の心得、非常時や故障時の対応、一つひとつの部品の役割などです。高校は普通科だったので、特段、機械に強いというわけではなく、分厚い本を、とにかく必死に覚えました。入社の時と運転員の候補に選ばれる時に、適性をみるための内田クレペリン精神検査、視力や色覚などをみる身体検査もありました。
社内選考に合格したあとは、関東運輸局での筆記試験に向けて約3ヵ月、通常の業務から離れて、本社でみっちり勉強しました。試験は鉄道車両や信号線路、車輛の構造や機能に関すること、関係法令や省令の知識、運転理論など10科目以上の科目があり、覚えなければならないことは膨大でした。

技能試験に合格して「動力車操縦者」の国家資格を取得

女性キャリアモデル橘川さん写真

改札のトラブルにも対応

筆記試験に合格すると、技能試験に向けた訓練を受けることができます。技能訓練は先輩の指導運転士と同乗して行うのですが、先輩は師匠、私は弟子。師匠から安心安全な運転のための心構えや運転の技術を実地で学びました。
技能試験には、「距離目測」「速度観測」「非常時の場合の措置」などがあります。「速度観測」というのは、電車のメーターを隠して運転し、ある地点で、今、時速何キロで走っているのかをピッタリと当てるというものです。景色の流れ方やモーターの音、出発駅からの距離などから判断するのですが、慣れというか、スピードを五感で感じ取ることが必要なんですね。毎日毎日訓練して、速度が体感的に分かるようになるのは難しかったです。
技能試験に合格すると、ようやく動力車操縦者運転免許を取得することができます。国土交通省から送られてくる免許証を手にしたときは、家族も泣いて喜んでくれて、誇らしい気持ちでいっぱいでした。
一緒に試験を受けた同期の女性も試験に受かったので、今シーサイドラインには2名の女性運転士がいます。
ただ、国家試験に合格しても、運転士としては、まだ働けません。実際に運行している車両の運転を朝昼晩に一人で行う「独車訓練」が問題なく行えるようになって、やっと運転士として働けることになります。

どんな人にも笑顔から。鉄道のしごとに大切なのは安全・快適・正確

女性キャリアモデル橘川さん写真

新杉田駅で、水野駅長と

シーサイドラインは、すべて自動で管理されているので、通常は無人運転で運転士は乗っていません。でも、強風や豪雨などの悪天候の時や災害が起こった時には、手動運転に切り替えます。運転士は、そういう時にいつでも運転できるよう、備えと技術向上のために訓練走行をしています。
シーサイドラインは、海沿いや住宅の近くを走っているので、風速が15メートルを超えると、モーターの音が聞こえなくなるぐらい風を受けて、揺れたり、線路に洗濯物や木の枝が飛んできたりすることがあります。私も電車を運転中、洗濯物を発見して、車輛の非常口から線路に降りて拾ったことが2、3度ありました。車輛に乗務員は一人しかいないので、状況に合わせてなんでもやります。非常時、故障時の安全確保の対応は、訓練でしっかり学びます。
運転士として心がけているのは、停車時になるべく衝動がないようにブレーキをかけること。駅と駅の間が短いのですが、時速60キロ出るんです。お客様に快適に乗っていただけるように、急ブレーキにならずに、スムーズに正確な位置に停車できるよう、運転技術を上げるための訓練を続けています。
しごとを続けていくなかでうれしいのは、お客様から感謝された時です。駅係員として、窓口で、「ありがとう」の一言をいただくと、とても励みになります。
気をつけているのは笑顔で対応すること。入社した当初は「女性じゃ頼りにならない」と、あるお客様に言われたことがあります。でも、我慢強く笑顔で対応を続けていたら、今では、その方は窓口の常連さんになりました。笑顔で対応することで心を開いてくれたのだとしたら、うれしいですね。高校時代に接客業を希望していたのも、人と直接関わるしごとがしたいと思っていたからなので、業種は違いますが、夢が叶いました。
このしごとで求められるのは、時間をきっちり守ることです。日本の電車はすごく正確で、何か突発的なことが起きない限り1分でも遅れることはありません。プライベートでも私は時間をきっちり守るタイプ。几帳面な人が向いているかもしれません(笑)。

次の目標は指導運転士。女性初を目指したい

しごとは、自分自身の成長につながります。お客様も天候も、日々違うことが起こって、状況を把握する力やその場に合わせた処理能力が少しずつ積み重なって、自分の身になってきていると感じます。外国人のお客様も増えてきたので、英語でのコミュニケーションを、もっととれるようにしていきたいですね。
次の目標は、指導運転士になること。もしなれたら、シーサイドラインで初めての女性指導運転士になります。運転士になって3年目になれば、指導運転士になるための試験を受ける資格ができ、社内の選抜試験に加わることができます。
指導運転士の次は全体をマネジメントする管理職ですが、今はまだ考えていません。まずは指導運転士を目指して、目の前のしごとをきっちりこつこつと積み重ねていくことで、その先が見えると思っています。

橘川さんからのメッセージ

私の強みは、自分から何事も積極的に動けることです。
入社したばかりのころ、「今まで教えてきたのは男性ばかり。どういう教え方がいいか」って聞かれたことがありましたが、「男性と変わらない接し方でお願いします」と答えました。「女性だからできない」と自分でブレーキをかけるのも嫌だし、「女性だからこれは無理だろう」としごとが制限されることも望みません。でも、今では、そんなことを聞かれることもないし、性別関係なく私を評価してくれていると感じます。
だから、何事も挑戦してみてください。「男性ばかりの職場だから無理」と諦めてしまうのではなく、自分がやりたいことを一番大切にしてほしいです。自分がやりたいことを見つけて、どんどん進んでいってもらいたいと思います。(2017年6月インタビュー)
(株)横浜シーサイドライン 新杉田駅 駅務運転員
橘川 みなほさん

Life & Career History

年表_橘川様