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継続することで見えてくるしごとの楽しさ・おもしろさ。 くらしのインフラを支える「ドボジョ」
継続することで見えてくるしごとの楽しさ・おもしろさ。
くらしのインフラを支える「ドボジョ」
東京電力パワーグリッド株式会社 神奈川総支社 神奈川工事センター 土木グループ 工事第二チームリーダー副長
服部 洋子さんHattori Youko
- 取得資格 特技
- 1級土木施工管理技士 初級アドミニストレータ 第2種電気工事士 コンクリート技士
- わたしの強み
- くじけない気持ちの強さ、こどもへの愛情
- このしごとに必要な力は?
- 継続力、創造力、柔軟性
- 年齢
- 45歳
- 家族
- 夫、子ども二人
- 東京電力パワーグリッド株式会社 神奈川総支社
ダムに魅せられて土木の道へ。
東京電力パワーグリッド株式会社(入社当初は東京電力株式会社,2016.4より分社化により現在の会社となる)で働き始めて、22年になります。私は、新卒で入社してからずっとこの会社で、土木一筋でやってきました。
会社のミッションは、皆さんの家まで、安定的に安全に確実に電気をお届けすること。電気は発電所でつくられて、途中、いくつかの変電所を経て電圧を下げながら各家庭へ送られます。変電所は、電気の流れを制御して、供給を支えるために不可欠なもの。私が担当しているのは、変圧器などを支える基礎構造物を設計し、つくり、保全すること。それに加えて、送電鉄塔の近くで計画される建物やトンネルなどの工事の影響について、他企業の方々と協議し、その内容を審査することが主なしごとです。
私が土木のしごとについたきっかけは、高校の先生が建築・土木関係の学部への進学をすすめてくれたから。専攻は土木工学だったのですが、入ってからがたいへんでした。強い志望動機があって選んだ学部ではなかったし、想像していたのとはまったく違っていました。
女子は一学年300人中10人、実地の授業にスカートをはいて行ったら「きみ、そんな恰好でやってもらっては困る」って。実地学習にスカートはふさわしくないですよね(笑)。そんなふうだったから、ほんとうにやっていけるのかと、自問自答したこともありました。
転機は、大学4年生のとき。水理研究室(水の流れの特性について考える研究)に入ったんです。その研究室の活動の一環で、ダム構造物を見て、その大きさ、ダイナミックさに「こんなダムが自分で造れたら、かっこいい!」って魅せられました。完成したダムは水を貯める治水だけじゃなく電気の供給もして、みんなの役に立っている。自分でダムをつくれたらどんなにおもしろいだろうと。
それから徐々に土木への興味がわいてきて、実際にダムをつくって、水力発電に携わりたくて、東京電力株式会社に技術者として入社しました。
男性職場で土木技術者として働く。
でも、残念ながら入社直後はダムの建設現場には配属されませんでした。当時、トンネル工事などは「女性が入ると山の神様が怒って事故が起こる」と、女性の立ち入りがタブー視されていて、女性はずい道(トンネル)に入るのもむずかしい風潮がありました。
入社1年目は運営系の業務、2年目に変電所に関する土木工事をやらせてもらえるようになって、5年目に水力発電がやりたいと希望を出し、念願かなって異動することができました。異動先は水力設備の保守部門。発電所へ水を導くためのダムや取水口,導水路などの土木設備の点検管理などのしごとです。
私が配属されたのは、神奈川県にある発電所だったのですが、そのころ女子寮はなくて、仕事場の目の前の社宅に住んでそこから通いました。仕事場と社宅の往復の毎日で、着ているのは作業服かパジャマ、という状況でしたね(笑)。
水力設備のしごとは、腕があってナンボの世界です。当時の同僚は水力発電一筋のプロフェッショナルばかりだし、力しごとも多く、任せてもらえることが少なくて葛藤もありました。正直に言って、女性一人で、こちらも壁をつくっていたと思うし、周りも腫れ物に触るような感じで、今振り返ってみると、チームメンバーともっと積極的にコミュニケーションを取りながら業務を進められたら良かったなと思います。
水力設備のしごとは、社内的に女性が就くことがなかったので、会社側も対応に苦慮したようです。坑内で女性が働くことは、女性を保護するという観点から、昔は労働基準法の規制がありましたし、法に抵触しないかなど、会社側も試行錯誤だったのではないでしょうか。
「ドボジョ」がリーダーになるということ。
チームリーダーになることを意識して日々を過ごしてこなかったので、工事の経験の少ない中、工事チームリーダーになったときは戸惑いを感じました。また、上司、メンバーとの意志疎通をとる難しさも感じ、とても悩みました。
今、チームリーダーとして3年目になります。ようやくチームを束ねるおもしろさがわかってきました。私は、リーダーになるまでは「自分一人でやる」というタイプで、リーダーになってチーム全体を回すというのは、責任を伴うし、とても怖くもありました。土木のリーダーは、リーダーシップだけでなく、高い技術力や安全を確保する判断力も求められます。現場は人の命やくらしと直結していますから。
技術系の女性管理職は身近にいなかったので、女性リーダーのロールモデルはいません。けれど、男性リーダーにもいろいろなタイプがいるので、たった一人の人をロールモデルにするのではなくて、たくさんのリーダーの良いところを少しずつ取り入れて、パッチワークのように自分がめざしたいロールモデルを作っているところです。
そして、私がリーダーになることで、次に続く女性技術者が働きやすい職場環境になるような働きかけができればと思います。
※ドボジョ「土木業界で活躍する女性」
フレックスタイム制を夫婦で活用。PTA役員も。
私生活では、結婚して子どもが二人います。私はフレックスタイム制を活用しているのですが、通勤時間が長いこともあって時間の余裕はありません。だから、自分のなかで、月曜日だけは子どもたちの顔を見て出勤する、水曜日だけは早く帰って夕食を作るというようなルールを決めています。夫もフレックスタイム制をとっていて、子どもたちの朝の送り出しは夫のほうが多いですね。私の父・母にも助けてもらっています。
実は今、PTA役員も引き受けています。集まりが平日昼間だと出席が難しいこともあるので、代わりに夫が出席したり、職場の人たちに早めに私の予定をお知らせし、しごとのスケージュール調整に協力してもらうなどして出席しています。
継続することで見つかるしごとのほんとうのおもしろさ。
私は、「継続すること」に意義があると思っているんです。小さいころから母に、継続すること、積み重ねることで見えてくるものがあると言われてきました。学校も常に皆勤賞だったんですよ。
当然、働いているとイヤなこともあります。だけど、辞めることは考えない。そうやって続けていくうちに、自分なりにしごとのほんとうのおもしろさに気づいていく。新たなおもしろさが見つかるから、さらにしごとが続いていくんです。
服部さんからのメッセージ
Life & Career History