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で答えを掴んでもらいたい。誰かからひょいと手渡されたものより、自分の手で掴んだものの方が、きっと大事にできるよ。そんなメッセージも込めたつもりだ。研究者というと、なんだか敷居が高く感じられるかもしれないが、研究者脳自体は、誰でも持つことができるし、生活の中ですでに活用しているひともいるはず。ただ、それが無意識、無自覚だと、宝の持ち腐れになってしまう(もったいない)。悩みを問いに置き換えて、思い悩むのではなく、探求してみる。悩みにフタをするのではなく、悩みと共存していく。そんなスキルを持てたら、自分の人生をいまよりもっと好きになれるのではないだろうか。か、美醜をテーマにした男性向けマンガがあまりないのだという。少女マンガにはこんなにブサイク女子がいて、悩みの種類も解決法もいろいろなのが羨ましいし、とても参考になると。そう、男だって見た目の悩みを抱えているのだ。でもそれをテーマにした男性向けマンガは多くない。そうやって「ないこと」にされている男の悩みや苦しみがあるのだと知れたことは、研究者として大変ありがたく、得がたい収穫だった。答えは自分の手で掴むマンガというフィクションを通じて実社会や実人生について考えるのは、明らかに「遠回り」である。しかし、その遠回りのおかげで、見えてくるものもある。そう確信するようになったわたしの最新刊は、『10代の悩みに効くマンガ、あります!』̶マンガを通じて、10代の悩みにアプローチしようとする本だ。タイパ世代の若者たちに、いきなり解決策を示すのではなく、遠回りでもまずはマンガを読んでもらいたいと思った。若者の悩みに応答を試みる作品がいくつもあることを知ってほしかったのだ。すばらしい作品を厳選したから、そこは信用してもらうとして、あとは作品をじっくり読み、自分の手特集悩みに効く探求心〜タイパ世代から見えてくるもの〜『10代の悩みに効くマンガ、あります!』(2023・岩波ジュニア新書)7フォーラム通信2023夏秋号