「フォーラム通信」2023年夏秋号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2023年夏秋号の特集は、「悩みに効く探究心~タイパ世代から見えてくるもの~」。連載「まだ名前のない◯◯」。


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ら研究してみようと思い立ったのである。研究者としてのスキルを活用して、リアルからフィクションまで、いろいろな夫婦のあり方を分析・考察した。芸能人の年の差婚から、ジブリ作品に登場する夫婦まで、本当にいろいろ……。そうして多種多様な夫婦を見ているうちに、「夫婦たるものこうあるべし」みたいな考えは先入観でしかないことに気づいた。そんなものはさっさと解体して、夫婦と言ってもいろいろなんだという事実を読者に伝えるべきだと思った。読者の中には、自分たち夫婦の悩みをすぐさま解決してくれる本だと期待した方もいたようだが、多様すぎる夫婦のあり方を知り、かえって混乱したようだった(なんだか申し訳ない)。ところが、結婚を考えている若い世代にはよろこんでもらえた。結婚をなにか大変な事業のように思っている彼らは「自分たちなりの夫婦像を作っていけばいいのだとわかって、ホッとした」と言っていた。いますぐ答えが欲しい読者と、ここから答えを作っていこうとしている読者。同じ本でも、手に取る目的が違い、出す答えが違う。そのことが、とても興味深かった。日本社会におけるルッキズム一方、『少女マンガのブサイク女子考』は、マン『少女マンガのブサイク女子考』フォーラム通信2023夏秋号6ガ研究を目的として書きはじめた本だった。少女マンガの中で不美人という設定になっているキャラクターについて深掘りしている本が見当たらなかったので、自分でやってみることにしたのだ。ところが、調べを進めるうちにちょっと考えを変えないといけないと気づいた。なぜなら、少女マンガのブサイク女子たちが体現しているのは、「日本社会における美醜の問題」そのものだったからだ。折しも、「ルッキズム」という言葉が知られるようになってきており、見た目や美醜の問題について真摯に取り組もうとする社会の流れができつつあった。「これはあくまでマンガのことなんで」と言い訳することもできたが、したくなかった。「いまの自分を苦しめている見た目の問題が、個人的なものじゃないとしたら?」「この社会のあり方が、強固な『ルッキズム』を生んでいるのだとしたら?」……マンガを通じてそんなことを考えられるような本を目指した。見た目にまつわる読者の悩みがきれいさっぱり消えることはないだろう。わたしにそんな魔法は使えない。けれど、こんな風に悩むのは自分のせいじゃないとわかるだけで、心持ちは大きく変わる。いまでも忘れられないのは、とある男性読者からの感想である。彼によれば、見た目のことを気にするのは男らしくないといった空気があるせい


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