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当たり前である(すぐに答えが出るような研究はやってもあまり褒められない)。答えを探すと言っても、ひとりでひたすら考え込むわけではなく、関係者に話を聞きに行ったり、過去の資料を集めたり、ちょっとした実験をやったりもする。つまり、他者の力を借りてOK。そうやって、ああでもないこうでもない、とやっていると、やがて問題の核心を掴んだかも、と思える瞬間がやってくる。あるいはまた、予想もしていなかったような方向に話が展開していくこともある。こうした手法は、研究だけでなく、普段の生活にも大いに役立ってくれる。たとえば、わたしは0歳までにオシャレになかつてライターとして『4りたい!』という本を書いたが、これなどは完全に「コンサバ服をうまく着こなせないという超個人的な悩み」を「研究的な問い」に置き換えることで解決しようとしたものだ。白いシャツの着こなしがわからないから雑誌に出てくる白シャツだけを見続けるとか、トレンチコートが欲しくて新宿のデパートを全制覇するとか、何デニールのタイツが似合うかわからないから全部買ってくるとか、やってることが完全に研究調査なのである。世の中ではオシャレに必要なのはセンスだと言われているし、ある程度はそうなのだろうとも思う。しかし、研究者は、というか、研究脳の持ち主は、そこで諦めない。センスがなくても、研究調査でなんとかなるんじゃないかという期待を捨てきれない。調査している間は、悩んでいる自分についてあまり考えずに済むのもいいことだ。何十冊もの雑誌を必死にめくっていると、鬱々と悩んでいる暇などない(笑)。そして調査が終わるころには、「これ、同じような悩みを持っている人にも役立つんじゃないの?」みたいな気持ちになっている。個人的な悩みが、他者に向かって大きく押し開かれていくような感覚。自分だけを救っておしまいじゃないのは、ちょっとした親切という感じがして、悪くない。自分たちなりの夫婦像悩みを問いに置き換えて研究しちゃおうという精神は、『夫婦ってなんだ?』という本にも反映されている。「バンドマンと結婚した大学教員兼ライターのわたしは、そもそも『夫婦として』という構え自体がめんどくさい。夫婦っいまはまだわからなてなんだ?い。わからないから、調べて、学んで、書いていく」……当時のわたしは、法律婚には踏みきったものの、はっきり言って「だから何!?」状態だった。結婚が、夫婦が、よくわからない。でも、わからないままだと、ちょっと気持ち悪い。それななんなんだ?『夫婦ってなんだ?』5フォーラム通信2023夏秋号特集悩みに効く探求心〜タイパ世代から見えてくるもの〜