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『40歳までにオシャレになりたい!』フォーラム通信2023夏秋号4かなか持てずにいるからだ。街中の広告が、あるいはネットの海が、解決策(らしきもの)を提示してくる。「まだそんなことで悩んでいるこうすればすぐ解決なのに!」というメッの?セージを大量に浴び、ときに押し流され、自分でも納得しているのかどうかよくわからないまま答えを出してしまうことがある。教え子の大学生たちを見ていても、そのように感じる。周囲の情報を遮断し、人生の課題とじっくり向き合うことができたらいいのに、と思うが、環境がそれを許さない。悩みやコンプレックスの捉え方彼らの「苦しみからいますぐ解放されたい」という気持ちもわからないではない。しかし、それでもなお、長い人生をサバイブするために必要なのは、早期解決のテクニックではないと言わせてほしい。でも、ただただ悩めとは言わない。それはさすがに酷すぎる。わたしが提案したいのは、悩みやコンプレックスを一種の「問い」と捉えて、探求してみたらどうだろうか、ということである。そんな風に考えるのは、わたしが研究者という仕事をしているからだろう。研究の世界では、問いに対する答えを時間をかけて探すのがタイパ重視の若者世代若者世代を中心に、「タイパ」という言葉が流行っているらしい。これは「タイムパフォーマンス」の略語で、時間対効果=時間的な効率のよさを意味している。コスパ(コストパフォーマンス、費用対効果)はすでに知られた言葉だが、次はタイパというわけだ。コスパ&タイパを意識して快適かつ有益な生活を……たしかに魅力的な惹句だ。ただ、無駄を嫌う傾向がこのままどこまでも加速していくとすれば、ちょっと心配である。なぜなら、人生、効率だけではどうにもならないこともあるからだ。「急がば回れ」とか「損して得取れ」といったマインドも持ち合わせておき、無駄に思えることとも、ほどほどに付き合える自分でいた方がいい。個人的な悩みやコンプレックスなども、答えを急がず、じっくり向き合った方がいいもののひとつ。これについては、ある程度年齢を重ねた方なら、きっと同意してくださるだろうと思う。しかし、これが若年層となると、そうはいかない。なぜなら、彼らは答えを急ぐ社会の中で生きていくことを余儀なくされていて、他の選択肢をな