「フォーラム通信」2020年夏秋号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2020年夏秋号の特集は、「私、のなやみ」「自分のためのこころとからだのメンテナンス」。


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回答者4髙山直子私、のなやみ●プロフィールたかやまなおこ女性問題専門カウンセラー・大学のハラスメント専門相談員・東京都の労働相談情報センター心の健康相談員米国で女性学とカウンセリング学の修士取得。NPO法人サポートハウスじょむのカウンセラーとして11年活動後、2017年5月に東京代々木に『カウンセリング&サポートサービスN』を開設。セクハラなど性的被害やDV、女性の労働問題を専門にしているが、「自己尊重」「コミュニケーション」「メンタルヘルスケア」「エンパワメントにつなげる支援」「ハラスメント」をテーマにした講演、ワークショップ多数。著書に『働く人のための「読む」カウンセリング―ピープル・スキルを磨く』(研究社)。『働く人のための「読む」カウンセリング―ピープル・スキルを磨く』(研究社)。30代男性Q1母からの電話は、「お前は何もしてくれない」、「○○さんは息子に旅行に連れて行ってもらった」など、いつも愚痴ばかり。私の妻や子どものことにもあれこれ干渉してくることが多く、困っています。私自身、子どもの時からずっと母に依存されてきた気がします。いわゆる、「毒親」でしょうか?最近は、正直、そんな母が重荷です。良い付き合い方はあるのでしょうか?A1「毒親」と理解してもお母さんの言動を変えられるわけではないですし、苦手感が消えるわけでもないですよね。お母さんが変わらない事実と向き合うのも苦しいですが、自分の親を「悪い親」と思うのも苦しいかもしれず、短絡的に「毒親」だと考えることが助けになるかは疑問です。あなたが知りたいのは、お母さんとうまく付き合っていく方法ですよね。では、まずは電話の場合にしぼってその方法について考えてみましょう。お母さんの愚痴を聞く限界は何分くらいですか?お母さんの言動そのものをコントロール(変えることは)できなくても、電話を切るタイミングは、自分がコントロールできる範囲かもしれません。例えば、「用事があって10分くらいしか話せないけど」と伝えて、お母さんに10分後に電話を切る心の準備をさせることはできますよね。次に、会話の内容について、他の人と比べられることや、妻や子どものことを言われることについて困っているとのことですが、「そういう話なら聞きたくない」と伝えたことはありますか?「僕だって連れて行ったよね」「妻はそういう人ではない」などと伝えたと回答する人は多いですが、伝えたいことは、「そういう話は聞きたくない」ということではないでしょうか。本当に伝えたいことを感情的になり過ぎずに一貫してその都度伝えることが重要です。相手の言動に変化が見られなくても、伝えるべきことを伝えたと思えると、あとは相手の問題として一線を引きやすくなります。また、お母さんの本意が「旅行に連れて行ってほしい」ということなら、「『旅行に連れて行ってほしい』と言ってもらった方がいい」と伝えるのも一つです。単に愚痴(嫌味)を言われていると思うとストレスになりますが、相手の目的が明確になると受け止めやすくなることもあります。お母さんとの「良い付き合い方」を模索しているようなので、お母さんとの関係を切りたいとまでは思ってはいないかもしれませんね。そうであれば、まずは相手を変えることではなく、電話の時間を限るなど自分にコントロールできることに着目すると、あなた自身の「目的」(意味)を見つけやすくなります。不快なことも目的を持つことで向き合い(付き合い)やすくなることがあります。中には「1カ月に一度母親の愚痴を聞く」ことを「目的」と意識するだけで、ストレスが軽減する人もいます。まずはあなたがお母さんと電話をする際の「目的」(意味)を考えてみるのはどうでしょうか?フォーラム通信2020夏秋号6


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