「フォーラム通信」2019年春号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2019年春号の特集は、「お金の、悩み」。


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20代女性学生友人が「年収600万円以上の人としか結婚しない!」と言います。それって、どうなの?恋愛にお金ありきって悲しくない?と思う私ですが、医学部入試での女性差別が発覚したり、就職試験でも男女で合否の操作があると聞きます。そんな社会で、ライフラインとして、年収600万円以上の男性(安定した収入の人)との結婚を考える友人は、ある意味、現実的。一つの生き方としてアリなんでしょうか?そもそも、『これからずっと年収600万円以上の人』と約束されている人は誰もいません。明日、会社がなくなるかもしれませんし、病気や事故で自分が働けなくなるかもしれません。結婚とは……などと大上段に語りたくはないのですが、自分が結婚したのは、この人が大変な目にあっても、よっしゃ、それを一緒になってどうにかしていこう、と思えたからであって、相手の持ち金のことなど考えたこともありません。(今、聞いてみたら)相手もそう言ってました。もちろん、一つの生き方としてはアリなのでしょうし、否定はしませんが、個人的にはナシな生き方です。「安定した収入の人」から「安定した収入」を引くと、何が残るのでしょうか。プロフィール1982年生まれ。フリーライター。大学卒業後、出版社で主に時事問題・ノンフィクション本の編集に携わり、2014年からフリー。『紋切型社会─言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社)で、第25回「Bunkamuraドゥマゴ文学賞」を受賞。「cakes」「SPA!」「VERY」「暮しの手帖」などで連載するほか、インタヴュー・書籍構成なども手がける。SatetsuTakeda砂鉄田武【特集】お金の、悩み3者回答30代女性会社員文系専門職です。大学院まで出たのに、それに見合った賃金の仕事が全然なく、専門職なのに非正規雇用ばかり。文系高学歴職業(翻訳、通訳)や社会福祉的な職業(カウンセラー、児童福祉施設)は専門的な知識や積み重ねが必要なのに、安く買いたたかれていて、本当にやりがいの搾取!かといって給料重視で、知識や技術を生かせない仕事に転職するのも嫌だし(できないし)悩んでます。ライターという仕事をしていると、できるだけコイツを安く使ってやろうと企んでくる人たちから見下されることが、しょっちゅうあります。誰にでもできる仕事だと思われているのです。誰にでもできる仕事というのはこの世の中には存在しません。一方で、「誰でもできる仕事だろ」と決めつけることは誰にでもできるのです。こうすればいい、という処方箋を差し出せないのは申し訳ないですが、いわゆる文系的な仕事(翻訳・通訳・カウンセラー・児童福祉に共通するのは、言葉を用いて人に伝えること、でしょうか)の現場には、儲けとは異なる尺度で評価してくれる人がいてくれるはず。自分も、そういう人にたくさん助けられ、仕事が広がっていきました。今の職場でその可能性を感じることが一切ないのであれば、職場を変えることも念頭に置かれるといいのではないでしょうか。『日本の気配』(2018/晶文社)20代男性会社員社会人3年目です。お金と時間がトレードオフになることに、モヤモヤしてます。学生時代は、やりたいことをする時間がたくさんあるのにお金が無い。就職後はお金は少しはあるけれど、時間(休み)が無い。これだけワーク・ライフ・バランスが叫ばれているのに有休も消化できない社内の空気の中で、定年まで、このまま黙々と働き、やりたいことを我慢するしかないのでしょうか?有休も消化できない社内の空気って、とにかく手強いですよね。以前、自分が働いていた職場も同様でした。その空気を打破しようとする同僚はいませんか。「もっと休みてぇよ」と思っている人がほとんどだと思います。今、その愚痴を居酒屋で言っているのだとすれば、今度はオフィスで言ってみてください。次は、会議で言ってみてください。「若造が言うな」とか「結果出してから言え」とか言われるかもしれませんが、有給休暇はキャリアを重ねた人にだけ与えられるものでも、結果を残した人にだけ与えられるものでもありません。ワークする場所はライフのことを気にしてくれないので、「黙々」から、少しずつ「ガヤガヤうるさい」存在になってほしいです。だって、やりたいことがあるなら、やってほしいので。5フォーラム通信2019春号


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