「フォーラム通信」2018年春号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2018年春号の特集は、「世の中は“息苦しく”なっている?」


>> P.4

︱ SNSで個人が違和感を発信、共有できるようになったのも大きいですよね。SNSについて、他に気になるニュースはありますか。 ワインスタイン氏の報道に関するSNSの議論が気になっています。 報道以降、本人が望まないあらゆる性行為はすべて性暴力だ、というメッセージがSNSで多く発信されています。とても大切なメッセージです。ただ一方で私たちは、毎回、義務感や強制性がまったくない、100%合意のある性行為をしているわけではありません。疲れているけれど応じる性行為もあれば、性行為バラエティー番組に大げさだ」と冷笑するような意見が見られました。自分は痛くもかゆくもないというポジションから介入してくる。その問題が、日常生活の不平等や不条理に直結している人たちがいるというのに。︱ 「嫌なら見なければいい」という声もありましたね。 社会とメディアの間には循環作用があります。社会に差別や偏見があるからメディアの商売に使われる、メディアの表現によって差別や偏見は維持され、強化されていく。ですから、やはりあの表象は許されざるものだという意思表示をしなければならないのです。︱ TV番組では、〝保毛尾田保毛男〟(ほもおだほもお)が復活したことが話題になりました。 まさか今、あのキャラクターを復活させるとは⋮。私が悪質だと思ったのは、〝保毛尾田保毛男〟批判への批判です。ネットを中心に「ただの#METOO経験のある同級生の存在に背中を押されての性行為もあるでしょう。そもそも女性に対しては、男性の性的欲求に応えるべきというジェンダー規範(性別により社会から求められる態度や行動)が存在します。100%の合意があるかないか、その点にこだわりすぎてしまうと、そういった規範や人間関係上のプレッシャーによる性行為の存在を見えなくしてしまいます。♯ハリウッドの 性暴力問題♯保毛尾田保毛男 が嫌なら 見なければいい?#保毛尾田保毛男バラエティー番組で80∼90年代に流行したキャラクター。2017年9月に30周年記念特番で復活した。ぴっちりした七三分けの髪型に青ヒゲを模したメークをし、ホモなのかと問われると、「あくまでも噂なの」とはぐらかす。ホモは男性同性愛者を侮蔑する差別用語。バラエティー番組だから深刻に受け止める必要はない。センシティブな人たちが大声で騒いでいるだけ。今も日本社会には性的マイノリティーへの差別や偏見がある。今回の表現はそれを助長するものであり、許されない。デブやハゲは笑いのネタとして容認されている。なぜホモはダメなのか。子どものころ、保毛尾田保毛男を観て、同性を好きになる自分は周囲から見ると気持ち悪い存在なのだと強烈に印象づけられた。次の日に学校に行くのが怖かった。大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏によるセクハラが告発されたのをきっかけに、ハリウッドにおける性暴力問題が明るみになった。一連の騒動を見た女優のアリッサ・ミラノ氏が「セクハラや性暴力を受けたすべての女性がMETOO(私も)と書けば、人々に問題の深刻さを伝えることができる」と投稿。この呼びかけに性別を問わず多くの人々が続々と応え、世界中でムーブメントを起こしている。フォーラム通信2018春号 4


<< | < | > | >>