「フォーラム通信」2018年春号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2018年春号の特集は、「世の中は“息苦しく”なっている?」


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特集世の中は息苦しくなっている? TV・CMの炎上をめぐって︱ では、どのような視点でCMを見ていけばいいでしょうか。 差別構造を背景にして、それを強化し、消費している作品は批判しなければなりません。作品一つひとつの文脈とその意図から判断する必要があります。批判する側も、たとえば被写体が外国人だったら、障がい♯炎上の裏にある 社会の不平等海を題材にしているのに性的表現がない。CMの理想の形だ。一人の若者が人間的に成長していく姿を爽やかに描いている。このCMに性的表現がないとは言えないのでは?男性の裸に性的魅力を感じる人は男女問わずいる。インドア派で太ったオタク風の青年は否定されるべき像として描かれている。男性差別だと思う。♯NETSURFERBECOMESREALSURFERネットサーファーの青年が海とサーフィンの師匠に出会い、肉体的にも精神的にもリアルサーファーへと成長していく観光PR動画。-◀ -- ▶- ︱ ! それはともあれ、かなり露骨に女性の演者に性的な意味合いのある演技をさせていますね。女性に性的なものを押し付けるジェンダー観がこれでもかと表現されており、不愉快ではあります。ただ、性的だから批判されるべきかというとそれは違うと思います。性は人間の一部分であり、あたかも性を人間の理性的な社会から切り離せるかのように考えるのは誤りです。︱ 下品だ、という批判も多くあったようです。者だったら自分は同じように批判したか。自分がどの立場にいて、何を基準としているのかを常に考えなければならないと思います。︱ マサキさん自身は先のビールのCMをどう思いますか。 女性もお酒を飲むし、そこに性差はないと言いたいのですが、企業は統計を取ったうえで、今回のメインターゲットを異性愛男性としたのでしょうね。くやしいですが、ターゲットが見たいものを見せて購買意欲を上げるのがCMの役割です。 日本では商品のボイコットがなじみにくいです。過去には成果をあげた運動もありましたが、少なくとも今はそうでない。そうすると、企業が自ら軌道修正しようとするモチベーションがありません。男女は賃金格差があるから消費に使えるお金が違う。企業が一般的なマーケティングをしたらいわゆる〝男性向け〟の商品ができる、という循環です。結局のところ、社会全体の不平等が改善されなければならないのだと思います。 個人が不快に思う気持ちはあるでしょうが、批判として「下品だ」というのはまずい手だと思います。近代社会においては、家庭で、夫婦で、一対一で、夜にひっそりと⋮といった性行為がスタンダードとされ、そこから離れるほどに下品とみなされました。そして、性の下品・下劣とされる面は、女性(特に貧困層の女性)や、性的マイノリティーに押し付けられてきました。「下品だ」と言うだけでは、そうした差別の構造を強化してしまう危うさがあるのです。 このCMの少し後に、地方自治体の観光PR動画が話題になりました。色白でぽっちゃりした男性の体が、サーフィンを通してたくましく引き締まっていくというストーリーです。先のビールのCMを批判した人たちのなかには、こちらを「性的表現がなくて爽やかだ」と評価した人もいました。でもこちらをよしとしてしまうと、女の裸=性的でいかがわしい、男の裸=ニュートラルでいかがわしくない、ということになってしまいませんか。男性の裸を性的に消費する視線は世の中に存在しているのに。3 フォーラム通信2018春号


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