「フォーラム通信」2018年秋号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2018年秋号の特集は、「お金×生き方」。


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フォーラム通信2018秋号6お金×生き方たので、試しにお財布を新調し、お札をきれいに整理して、ざっくりとしたお金の流れを把握するようにしました。そして「ありがたいなあ」と思うようにしてみたのです。小慶島子さんの本『幸せな結婚』(2018年/新潮社)最新刊に、2組の共働き夫婦を描いたリアルな小説、『幸せな結婚』が。「夫が疎ましくなったり、妻に幻滅したり、よその夫婦が羨ましくなったり、人生こんなはずじゃなかった……と思ったら是非、読んでみて下さい。打算も見栄もシェアするのが夫婦なのかも。」(小島さん談)その他に、突然の夫の退職を経てのオーストラリア移住、日本への1か月ごとの出稼ぎ生活の経緯がつづられた『これからの家族の話をしよう』(2016/海竜社)も。小島さんの夫婦関係(リアルすぎる夫婦げんかの様子も!)や、子育てについての本音が満載で、「良い家族」幻想に縛られず、自分らしく生きていく元気をもらえる一冊です。そうしたら不思議とお金のことを考えるのが以前ほどは怖くなくなり、貯蓄や保険の見直しなど、随分と整理がつきました。子供が生まれて、真剣に将来のことを考えるようになったのもあります。住宅ローンはあまりにも性に合わなかったので、私が会社を辞めるときにマンションを売ってしまいました。それからは生活のニーズに合わせて賃貸暮らしです。突然、大黒柱に!?事件は2013年に起きました。夫が仕事を辞めたのです。共働き前提で生活してきたのに、いきなりの世帯収入激減。呆然としましたが、そうだ夫は肩書きと収入を失った代わりに時間と移動の自由が手に入ったのだから、東京以外で子育てができるじゃないかと発想を切り替えました。都心に住んで、子供を二人とも中学から私立に入れて、英語教育に投資して、予備校代を工面して、手狭になったら広い部屋に引っ越して……というお金を足したらかなりの額。それと同じくらいの金額で、贅沢さえしなければ、私が生まれてから3歳までを暮らしたオーストラリアに教育移住できることに気がつきました。何年住めるかわからないけど、よしやってみようと引っ越したのが2014年。一家を支える大黒柱の私は、毎月日本に出稼ぎに来ています。そんな生活も5年目です。〝男らしさ〟は私の中にも初めは夫に対して「無職のくせに」「誰のおかげで暮らしていけるんだ」なんて思ってしまったことも。自分が「男は稼いでなんぼ」という偏見に凝り固まっていたことを発見してショックでした。そんな価値観から自由になるために、自力で稼げる女になったはずなのに。男性と対等の待遇で働くうちに、男性を縛っているのと同じ、男らしさ幻想を身のうちに取り込んでしまっていたのです。それから自由になるのに3年くらいかかりました。夫は、妻が出稼ぎ生活に追われている間、異国の地で新生活をスタートさせるのに全力を尽くしました。英語もろくにできないのに、まさにゼロからのスタートです。子供達が笑顔で学校に通っているのを見るにつけても、夫がどれほど頼りになる存在かがわかりました。とはいえ、未だに大黒柱には慣れません。一人で働くのって、やっぱりしんどい。かつて男は一家を養って当たり前と言われた時代に、男性たちも随分辛い思いをしたのだろうなと気づきました。女性差別が根強い日本ではまだまだ男女平等に向けてやるべきことがありますが、それは「女も男並みに」ではなく、「あるべき男・あるべき女」像を壊すことなんじゃないかと思います。家族のために、今は私が働く今は私一人で自転車操業で家計を支えています。正直言えば、共働きの頃に戻りたい。だけど日々家族でなんとか生きていけるだけのお金が入ることに感謝して、今日一日を大事に生きようと思っています。日々の暮らしは節約しているけど、子供達の学校が休みの時は、長距離ドライブで小旅行に出かけることにしています。オーストラリアの大自然の中で一緒に見た風景や交わした言葉は、きっと家族にとって、一生の財産になるから。お金で買えるものの中には、お金では価値が計れないものもあるんですよね。日本でも地方に移住して子育てをする人がいるのも頷けます。海と空と緑と穏やかな空気は、何にも代えがたい天の恵みです。まさかこんな人生になるとは思わなかったけど、未知の大地に一歩を踏み出したら、案外地続きだと気がつきました。今日も次の家族旅行を楽しみに、大都会東京で一人働く私がいます。


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