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を中心に、女性に対する社会の圧力や偏見を「呪い」と表現するのが流行りました。 呪い、流行りましたね。これまで私たちが自主規制してきたのは、実は外部からの呪いによるものではないかという訴えは、意義深いものだと思います。 『逃げ恥』の登場人物は、みんなどこかマイノリティです。お世辞にも「男らしい」とはいえない平匡さん、学歴はあるけど職がないみくり、バリバリ働いているけれど「高齢処女」である、みのりの叔母・百合ちゃん、平匡さんの同僚でゲイの沼田さん⋮一人ひとりの呪いを解きながら、物語は進みます。 だれかの個性を受け入れたり、自分の個性をだれかに受け入れてもらったりしたい。この世界に、ちゃんと自分の居場所を見つけて生きていきたい。それは『NANA』に描かれるような大きな願いではありませんが、小さくとも切実な願いです。『逃げ恥』は、そうした小さな願いを叶えつつ、読者をキュンキュンさせてくれる、奇跡のような作品でした。︱『逃げ恥』の後に話題になったのが『東京タラレバ娘』です。 『タラレバ』は、呪いを読者に過剰摂取させることで気づきを促す作品で、ちょっと炎上もしました。「女同士で飲んでつるんで、タラレバ言ってんじゃないよ。だから結婚できないんだろ!」という感じで、全体的に体育会系のノリが強いのですが、根っこにあるテーマは『逃げ恥』と同じで、呪いと向き合い、自分ら『東京タラレバ娘』(講談社)全9巻作者:東村アキコ 連載開始:2014年「あのときああしていたら」「もっとこうしていれば」脚本家の鎌田倫子は、恋も仕事もうまくいかず、焦りながらも親友たちと女子会を繰り返す日々を送っていた。そんな倫子にイケメンモデル・KEY(キー)は「このタラレバ女!」とたびたび毒舌を吐く。2017年、日本テレビでドラマ化。しく乗り越えていくことにあると思います。 私は労働女子マンガとしても『タラレバ』を読んでいました。主要な登場人物は皆会社員でなく、フリーランスです。東京に住むフリーランスが、金持ちとまではいかないけれどそれなりに都会を楽しんでいる。そんな設定もまた興味深かったです。王子様がいなくても2005(平成17)2006(平成18)2007(平成19)2008(平成20)「第2次男女共同参画基本計画」策定「男女雇用機会均等法」改正(セクハラ対策の義務化、男性に対する差別・セクハラの禁止、出産等解雇無効化他)「DV防止法」改正(保護命令制度を拡充し、電話等を禁止他)「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」および「仕事と生活の調和推進のための行動指針」策定リーマンショックにより世界不況拡大︱最後は『プリンセスメゾン』。私は今回はじめて読んだのですが、すっごくよかったです。 すっごく、いいんですよ! 本作は、年収250万ちょっとの独身女子・沼ちゃんが、マンションを買う物語です。「この先結婚して子どもが産まれるかもしれない、そしたらもっと広い部屋がいいかもしれない」なんて、いつくるか分からない日のことなど沼ちゃんは考えない。考えないけれど『ハッピ・ーマニア』『ヘルタースケルター』のように、未来を放棄しているわけでもない。自『逃げるは恥だが役に立つ』(講談社)全9巻作者:海野つなみ 連載開始:2012年大学院を出ながらも無職になった森山みくりは、津崎平匡のもとで家事代行アルバイトを始める。利害が一致した二人は契約結婚という道を選ぶ。2016年に新垣結衣・星野源主演でTBSにてドラマ化。最終回の視聴率は「火曜ドラマ」枠史上初となる20%超えを達成した。フォーラム通信2017秋号 6