フォーラム通信2017秋号

公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会の男女共同参画センターは、女性の仕事・起業・心とからだの健康支援・DV相談・セクハラなど性差別の申出・パソコン講座、子育て支援等の事業、施設貸出を行っています。フォーラム通信は、号ごとにテーマを定めた特集やくらしに役に立つ情報を盛り込んだ情報誌(無料)です。


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特集オンナの欲望 少女マンガでたどる30年『東京ラブストーリー』から『逃げ恥』、『プリンセスメゾン』までカッションさせていましたが、安野さんは二人を結婚させたんだなあと感慨深かったです。2017年の『ハッピー・マニア』、続きが楽しみです。 夢と恋、 対照的な二人のヒロイン︱『NANA』は2000年、ミレニアムイヤーに始まった作品です。 仕事(夢)と恋のどっちが大事? とヒロインに悩ませる手法は、少女マンガではよく見かけますが、『NANA』はそれを二つの人格に振り分けているのがおもしろい。ミュージシャンとして成功する夢を追いかける大崎ナナ(ナナ)と、恋愛にしか興味がない小松奈々(通称ハチ)。対照的な二人のヒロインですが、実際は一人の女の子のなかで、その二つがせめぎ合っていたりしますよね。︱TVドラマ『やまとなでしこ』が放送されたのもこのころです。 どちらも野望を胸に成り上がろうとするヒロインですね。『ハッピー・マニア』『ヘルタースケルター』の混沌とした時代からすれば、いくらか「夢」が回復してきたともいえます。︱ハチはあこがれのミュージシャンと恋愛し、妊娠します。 ハチの身に起こっているのは、とても古いタイプのシンデレラストーリーです。恋愛して、結婚して、豪邸に住む。男の力によって「幸福」を手に入れていく。かたわらには、自分の才能で成功を手にしようともがいている親友・ナナがいる。女の欲望を究極の二択の形で表現しているともいえます。 『逃げ恥』が描いた 呪いと願い︱ここから最近の作品です。まずはドラマも好評だった『逃げるは恥だが役に立つ』(『逃げ恥』)。 最先端の女の人生を描いていると思います。ヒロイン・みくりは高学歴で、大学院まで出たけれど職がない。結局、女は頭がよくても得をしないじゃんというところから物語は始まります。殺伐としていますが、リアルなテーマです。 みくりは父の部下であった平匡さんのもとで家事代行のアルバイトを始めるのですが、ドラマ版では、彼女が清掃のパートをしていた母のスキルを受け継いでいることになっており、より描写が丁寧です。彼女が女だから家事ができるのではなく、サービスを提供するプロとして、きちんとスキルを身に付けている。こういう細かい部分にも、ジェンダーへの配慮が感じられます。 生き延びるために結婚する(契約結婚)という設定も画期的でした。知り合いのライターに、恋バナを聞き集めてコラムを書いている清田隆之さんという方がいるのですが、彼が言うには、最近の恋愛は生存戦略なんだそうです。一人きりだとのたれ死んでしまうから、結婚しなくてはいけなくて、結婚するためには、とりあえず恋愛するしかない。どうすれば恋愛できますか、という相談は、つまりどうすれば死なずに済みますか、という相談と同じだと。『逃げ恥』にも、そんな時代の趨勢をすくい取った、ある種の身もふたもなさがあります。︱ドラマの最終回では「呪い」という言葉が出てきました。その後ネット『NANA』(集英社)既刊21巻※作者病気療養のため休載中作者:矢沢あい連載開始:2000年偶然、同じ日の同じ新幹線で上京した大崎ナナと小松奈々。意気投合した二人はルームシェアを始める。2005年に中島美嘉・宮崎あおい主演で映画化。2000(平成12)2001(平成13)2003(平成15)2004(平成16)介護保険制度スタート国連特別総会「女性2000年会議」開催(ニューヨーク)「男女共同参画基本計画」策定「児童虐待防止法」公布「ストーカー規制法」公布米国同時多発テロ事件発生男女共同参画会議・男女共同参画局設置「DV防止法」公布イラク戦争勃発「次世代育成支援対策推進法」公布新潟県中越地震発生「DV防止法」改正(精神的暴力、元配偶者を保護命令の対象に含む他)「児童虐待防止法」改正(目の前でのDV等間接的な被害も虐待に含む他)「育児・介護休業法」改正(適用対象を有期雇用者に拡大他)2000Sⓒ矢沢漫画制作所/集英社5 フォーラム通信2017秋号


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