003【横浜連合婦人会館史を読む】横浜連合婦人会館史 100年のバトンを受けとる

「横浜連合婦人会館史」100年のバトンを受け取る(公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会)


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中上流階級に属する会員みずから、また市内の女学生有志も街頭に立って旗を売った。その経験を問われて二宮わかは、「広い世間の生きた空気を呼吸せずに家の中にばかり坐って居るのは婦人としての本来の義務を完全に尽す事は出来ませぬ、今回企てられた旗の会は此点から見て頗る有意義でありました」と答えている(『横貿』十一月十二日)。即位のお祝にかこつけて、家に籠もりがちな上流女性や女学生にものを売る経験をさせ、得た利益は図書館事業や慈善事業にあてるという一石二鳥、三鳥をねらった横浜女性たちのしたたかさがうかがえる。そして、いつの場合も渡辺たまはトップを引き受けて全体を統べながら多くを語らず、二宮わかが会合などでは雄弁に語り、メディアの対応もするという役割分担ができあがっている。横浜家庭製作品奨励会家庭製作品奨励会の目的は、本冊冒頭の野村美智の手記によると、「当時、物議を生ぜし所謂有閑階級と目せられし中流以上の家庭婦人を動員して家庭の労作に従事せしめ、家庭の生産をはかる一方、各家庭に死蔵せらるる不要品を持ちよりて互いに交換し、有無相通じて無駄なき暮らし方」をすることとある。「物議」が何をさすのか不明だが、対象は中流以上の婦人。しかし、同じく野村の「多角的なご活動」には、渡辺が「同志の方々と共に授産事業を目的とする製作品奨励会なるものを起こされました」とある。授産事業となると、低所得者層の女性に仕事を与えて収入の道をはかったことになり、趣旨がはっき127「横浜連合婦人会館史」解説


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