001【表紙~本冊】横浜連合婦人会館史 100年のバトンを受けとる

「横浜連合婦人会館史」100年のバトンを受け取る(公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会)


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ょうど猫の子でも可愛がるようにして、その馬を抱いてたてがみのところをいつまでも撫でておられました。老の頬を少しあからめていかにもおうれしそうでした。本当に持って来てよかったと私もうれしく思いながら帰ってきました。あとで聞きますと、一週間位も風邪の床の上までその馬を置かれては、来る人毎に、馬の由来を説明されて楽しんで下さいましたそうです。姑の没後そのあと片付けをしていますと、うす暗い押入の奥に馬のような置物が箱にも入れず白い布をかけて入っていました。まあ箱にも入れずにと思って力いっぱいに引き寄せようとしますと、なんとそれは軽いゴムの馬でした。先年私が新年会の折、ルーレットで当てて姑にさし上げたあの記念の馬でございました。そっと白い布を取り除けて見ますときれいなあの時の姿のままでした。ただ違うのは鬱金木綿のぱっちりした胴巻をつけて、一層風采を上げていることでした。思わず新年会のあの日のことが胸に浮び出まして、涙ぐましくなりました。よほどこの馬がお気に入ったと言うよりも、人の好意をどこまでも汲みとって下さる姑の心持ちを思って、しみじみ当時がなつかしくなりました。そうしてその時以来私の家に連れて参りました馬さんは、今も末っ子の無くてはならぬお友達になっております。(昭和一七.一一.二七)思い出をたどりて須藤あさ大正十二年の大震災で焼土と化した横浜がボツボツ復興致して参りました頃と記憶71横浜連合婦人会回顧録


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