「フォーラム通信」2023年冬春号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2023年冬春号の特集は、「私、の痛み~痛みのジェンダー・ギャップ~」「家庭科教師で野球部監督で」。連載は「地球で行きてる私たち」。


>> P.6

フォーラム通信2023冬春号6活を題材にしているので、入り口のハードルが低いというのは長所だと思います。これまで、生き方まで変わる生徒を何人か見てきました。今年も授業の影響で、児童養護施設の職員や、家庭科の教員になるために進学するという生徒も。そういう生徒って、授業中は意外とおとなしかったりするんですが、響いてくれていたのかと思うとすごく嬉しいですよね。がほしいか・ほしくないか」という質問についてはすごく変わりました。15年前は「結婚したくない人」と手0人の内、をあげさせると、クラスの41〜2人が、とても気まずそうに手をあげていました。今は各クラスに十数名はいて、堂々と手をあげますよ。変わらないのは性別役割分業。共働きやひとり親家庭も多いのに、男性が一人で一家の収入を担うべきだとか、専業主婦願望の生徒も多い。­­­どんな授業をされていますか「人生と家庭生活」という単元を一番初めにやります。人生観とか、自立の必然性を考えた上で学ぶ衣・食・住生活の授業って、やっぱり違うと思うんですよね。男は別にやらなくっていいんでしょ、みたいな感じじゃなく。だから非常によくやりますよ、うちの生徒は。被服実習も調理実習も男女の差なんかないです。あるわけないですよね。同じ人間なんだから。ていそして、授業と同じくらい大事だと思っているのが、授業でやっていることを授業以外の場面でも当たり前の体で体現することです。授業で家族は多様ですとか、いろんな性自認、性的指向の方がいます、とか言っておきながらふとした場面で「彼女いるの?」と聞いたり「両親は?」と聞いたりしてはだめなわけで。­­­最近の高校生のジェンダー観初任の時から4月の最初の授業でア5年くンケートをずっとやっていて、1らいずっと見てきた肌感覚ですが、「結婚したいか・したくないか、子どもセクシュアルマイノリティの問題を授業で扱って学んでも、日常生活の中でLGBTを笑いのネタにするような会話が学校の中にたくさんあります。そこらへんがすごく根深いし、再生産されていく問題ですよね。一回くらいの授業では変わらないという無力さを感じます。やっぱり育ってきた家庭の家族観やメディアの影響は大きいんだろうなと思います。でも、授業を担当しているクラスと野球部の部員、自分の任された生徒の小さい変化とか成長にこだわってやっていきたいなと思います。­­­部活動の女子マネージャーについて女子マネージャー自体が良くないということではなく、内容ですよね。まず、頭に「女子」と付けなくていい。マネージャーというのは職場とかで言うと、管理者、支配人という意味ですよね。つまり、部活で言うとキャプテンと同格でなくてはならないし、それ以上でなくてはいけないと思っているんです。その仕事ができるんだったら女子でも男子でも関係ないです。判断したり全体を動かしたりする役目は組織には絶対必要ですから。今の多くの高校部活動の中でマネージャーと名乗っている人がやっていることは、アシスタント。呼称を変えるか、仕事内容を変えるべきだと思います。呼称と内容が合ってないから、女子は裏で男子を支えるというおかしな価値観を刷り込むことになっている。うちの部活では、マネージャーをやりたいという女子生徒には必ず面談して、「何でマネージャーなの?」と聞きます。だいたい、「野球が好きだから」とか言うんですが、「何で選手をやらないの?」って。この質問をすると、ステレオタイプなマネージャー観を持っている生徒は、面くらっちゃいますよね(笑)。マネージャーってそういうものじゃないからというところから話して、「手伝い」がしたいならうちはいらない、選手達自身にやらせるからと伝えます。それでも入ってきているのが今のマネージャーで、よく食らいついてきています。例えば技術練習で僕が選手に指摘したことを全部メモし、選手一人ひとりにどこを見てほしいか聞き、把握した上で、技術的な指摘をしたり。今では練習全体を仕切る場面もあり、不可欠な存在になりつつあります。女子にはできないと野球の指導者が思っていたら、やらなくていいしできないまま。こっちがどこまで求めるかということに尽きると思います。­­­箱根駅伝で物議をかもした「男になれ」「男だろ」的な声かけそういう発言は僕はしないです。生徒たちも、1年生はそんなこと言ってることもあるかもしれないですが、さい頃から料理とかやっていましたし、「男だから」「女だから」とは言わない親でした。当時としては柔軟な考えだったのかなと思います。­­­家庭科の魅力とはいくつもありますが、自分にとっての魅力は、教員として授業力が試される教科だなと感じることです。受験に出るからとか、試験に出るよ、という切り札は使えない。授業の中身と持っていき方と題材選びで勝負しないといけない。授業が面白ければ生徒は参加してくれますけど、面白くなかったら寝たり〝内職〟されて終わり。そういう意味でやりがいがありますよね。あとは、返ってくるものがあるということ。生徒にも心がある。心ある授業ができた時に期待以上の反応や感想があるのがこの教科かなと。生徒にとっての魅力は、やっぱり僕が感じられたように、ものごとの見方、考え方が変わる、当たり前が崩れていく、というところ。そして、身近な生


<< | < | > | >>