「フォーラム通信」2021年冬春号

横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2021年冬春号の特集は、「私、の夢」「コロナ疲れを感じているあなたに」です。


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「女性が女性の生きづらさについて書かなくていい世界線に」女性の生きづらさは女性だけの問題?以前、あるミドル世代の女性が若い女性が置かれている状況に胸を痛め、「自分が大人として責任をもって変えていかねば」と話した時、でも、そこに同席していた同世代の男性は何も言わない、ということがありました。私、何で女性だけ、その人の時間と人生をかけて、女性の生きづらさについて解決をしないと私、の夢いけないのかって思ったんです。なったら、全然書かないと思います。そうこうしている間に寿命は迫ってくるわけじゃないですか。もっと別の功績を残せたかもしれないのに、女性だけが女性の生きづらさにかかずらわされている。このことに時間を取らされない世界線になればいいなと思っています。ヴァージニア・ウルフがフェミニズムについて書かなくてよかったら、何書いたんだろう、と思ったり。私の作風も、もし、このことを書かなくてよくはらだ有彩さんはらだありさ関西出身。テキスト、テキスタイル、イラストを作る“テキストレーター”。2018年4月に『日本のヤバい女の子』、2019年8月に続編となる『日本のヤバい女の子静かなる抵抗』(柏書房)を刊行。デモニッシュな女の子のためのファッションブランド《mon.you.moyo》代表。ウェブメディアなどでエッセイ・小説を連載中。ウェブでの連載中、人気を集めた「だめじゃないんじゃないんじゃない」は2021年度中に書籍化が決定している。今は、この問題について、アンテナが立ってる人が動かされている、動かざるを得ない状況。「水回りの掃除は気づいた方がやろうね」という感じになっていると結局、気づいた人ばっかりやり続けているという〝あれ〟ですね。私のこの夢の実現にむけて何をするのがいいのかなと思うと、例えば水回りの掃除をすると500円がもらえるとか(笑)、「打算」で動いた結果、男女の不均衡にアプローチしていけるような状況や空気を作っていくことが必要じゃないかな。打算と言うと悪いことみたいですが、ある程度、打算で動ける空気がないと会社とか大きな組織を動かせられないというか。情熱だけで動かそうとすると、情熱を燃やす人が疲れちゃうので、ほっといても回っていくというような仕組みが必要。そして、自分の知らないことを知ってると思ってる人が多すぎる。満員電車で「足踏んでますよ」と言われたら、普通、自分の足を見るじゃないですか。で、「あっ、すみません!」となると思うんです。でも、足を見ない人が多すぎ。確認もしていないのに「踏んでませんけど」って。今の女性が声を上げることに対する反応がそういう状態ですよね。ちょっと足元を見ればいいだけのことなのに。『鬼滅の刃』と女性の生きづらさ最近、雑誌『SPUR』や他のメディアでも、漫画『鬼滅の刃』について語ったんですが、ここにも女性の生きづらさの話があって。鬼殺隊最強のメンバー「柱」の一人に甘露寺蜜璃さんという人物がいます。力が強く大食いという個性があって、そのせいでお見合いを断られたり、「女」という規範でいう「人間社会」からはみだしているような存在だったんです。その甘露寺さんが見つけた唯一の居場所、自分らしく生きていける場所が「鬼殺隊」だったんですが、そこで望まない形で女性性を強調する装いを強いられるんです……。甘露寺さんが嫌がっているのに無理強いする描写が何個かあるんですよね。その原因が前田まさおっていうキャラなんですが、こんな風に「生きやすさ」の最適解を模索する組織が一人の人間によって腐敗させられることって現実でもあるなと思います。変えていきたい。3フォーラム通信2021冬春号


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