「フォーラム通信」2019年夏号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2019年夏号の特集は、「私、の話」。新連載は「まだ名前の無い◯◯」、「地球で生きてる私たち」。


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私、の話 Personalispolitical!私、の話PersonalisPolitical!!堅田香緒里さん北原みのりさん×それぞれの「私、の話」堅田はじめまして。私は、社会学部で教えています。専門は社会福祉学で、主に貧困や対貧困政策の研究をしています。7北原はじめまして。一回り違うんですね。堅田さんの世代はロスジェネと言われた就職氷河期世代。きつい世代だと思う。生き抜かれてきた9年生まれです。ことを尊敬します。私は、経済的には希望を持てる世代として生きてきました。子どもの時から母親に「経済力をつけなさい」と言われて、専業主婦のママに言われてるのって不思議、と思いながらも、そこがベースなんだなと、大学では経済、国際金融論を学んで、ウォール街を歩くのが自立のイメージでした(笑)。でも、全然、面白くない。ゼミで友だちが一人も出来ない(笑)。会社の名前とか年収、そういう成功しかない世界という感じで、何か違う、と思い、卒論は教育学の性教育で書きました。自分自身、性教育を学んでいれば性の体験をもうちょっと楽なものにできたんじゃないのかと、その重要性を考えたいと思ったんです。国際金融論のゼミの先生に、「この勉強もう無理です。だけど将来何したらいいかわからない」と伝えたら、「女の経済を作るのがいいんじゃない?今やってるのは男の経済。それは君にはつまんないだろう」と言ってくれた。それまではジェンダーと経済が結び付くとは全然考えもしなかったので、男の経済の中で自立・就職することしか頭になかった。じゃあ、今までのシステムにのらないで生きていくにはどうしたらいいか、自分たちで会社を興し、それを模索した20代でした。なぜあんなに母は自立、と言ったフォーラム通信2019夏号2のか。経済的なところで自由でいられない悔しさがあったんだよね。女の人が生きる上でもっと未来を感じられるのが、堅田さんが研究しているベーシックインカムなのかなと思ってます。堅田貧困のことをやっていく中で、ベーシックインカムにたどりついた感じです。地方の出身で、ホームレスなんてほとんど見たことが無かったんですが、高校の時に初めて都会に出てびっくり。人が外で寝てる!恥ずかしいぐらい無知だったんです。うちはお父さんが酒飲みで、たまに酔っ払って外で寝てたりしてたので、そういう人かなとか(笑)。何してるんですか?と話しかけると、「うるせえ、あっちいけ」とか言われて。今思うと、家がないからに決まってるんだけど(笑)。その後、たまたま、横浜の寿町で、あるホームレスの女性と出会い、大きな影響を受けたんです。それから貧困の問題や野宿者支援の運動に顔を出すようになりました。でも、その運動はめちゃくちゃマッチョで、セクハラも横行。ずっと苦しいなと思っていて、フェミニズム的なことに行きつきました。でも、本で読むフェミニズムって自分の中ではあまりしっくりこなくて、心からいいと思えるものが無かったんです。私の出会った野宿の女性は、ものすごく虐げられながらも、国家にも家族にも依存せず、ある意味では誰よりも自立して生きている。抵抗しながら。そんな彼女たちにも通じるものと思えなくて。でも、北原さんの『日本のフェミニズム』は、これまでのフェミ本とはちょっと違う。これなら学生と一緒に読みたいな、とゼミでみんなで読みました!ベーシックインカムって?堅田私が研究しているベーシックインカムは、すべての個人に生活に必要な所得を無条件で保障するような政策構想なのですが、70年代、貧しいシングルマザーたちの戦いの中で要求されたものなんです。例えばイギリスでは、福祉給付を受けていたシングルマザーたちが、良き母親でなければいけない、男と暮らしてはいけない、と役人からふるまいを監視され、行動を制約されていました。そこで、監視されたりしない福祉給付って何だろう?というところから出てきたアイデアだったんです。また、この運動の担い手には学生や失業者など、色々な属性の人がいて色々な形態の福祉給付をもらっていたのですが、人々が分断されるような給付のあり方ではなくて、みんながもらえる普遍的なものを要求しようとなっていった。今は、パイの取り合いになってるじゃないですか。こっちの方が困窮しているんだから、と。そうではな


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