「フォーラム通信」2019年春号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2019年春号の特集は、「お金の、悩み」。


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50代女性パート夫がもうすぐ定年をむかえますが、定年後のお金のことは全然、話し合っていないです。そもそも、夫自身が「退職金は長年勤めあげた自分への慰労金、自分のもの」と思っている節が。わたしだって家計を支えてきたのだから「二人のお金では」と言いたいところですが……。今後のお金のこと、どのように切り出せばうまく話せるでしょうか?どう切り出してもケンカになります。でもケンカをしないと、この溝は乗り越えられません。そしてケンカは、今しておかないと後々さらに面倒くさいことになります。いちばんいいのは、あなたが「二人のお金だ」という確固たる意志を持って、声を荒らげずに夫を説得することですけど、向こうが荒らげたら、売られたケンカを買うことになる。ふつうケンカには、相手を立てつつひきずり降ろす、正面から攻撃せずにジャブをくり出すなどの技術が必要ですが、この問題のように、根本的な考え方の違いに気づきながら、話し合わずにほったらかしてきた場合、血まみれの全面戦争になることも覚悟して挑んでください。相手はたぶん覚悟してないから、覚悟してる分こっちに利がありますよ。HiromiIto比呂美藤伊【特集】お金の、悩み1者回答©「吉原洋一」プロフィール1955年、東京都生まれ。詩人。『良いおっぱい悪いおっぱい』『おなかほっぺおしり』シリーズで育児エッセイの分野を切り開き、世の母親たちの共感を呼ぶ。以降『父の生きる』『女の一生』『閉経記』『犬心』など、女の生活に密着した「生きる」「死ぬ」を見つめてきた。『とげ抜き新巣鴨地蔵縁起』『読み解き般若心経』など、仏教文学と語り物の融合した世界を作り上げている。現在は、早稲田大学で教育に携わり、九州と東京の二拠点生活中。最新刊は、抱腹絶倒エッセイ『たそがれてゆく子さん』(中央公論新社)。『たそがれてゆく子さん』(2018/中央公論新社)60代女性主婦ひきこもりになって、仕事に就くことができなかった40代の子どもがいます。夫は、仕事を最優先し、ずっと、向き合おうとしません。最近、「こうなったのはあんた達、親のせいだ。責任を感じるなら、金を出せ!」と、以前より、激しく金銭的な要求をしてきます。こちらも年金暮らしで余裕はなく、いずれ、先に死んでしまいますし、この子のことが心配です。親のせいだというのは、当たらずとも遠からず。こういう問題は、この子だけの個人的な性格や生き方のせいではない。家族全体の問題だ、わたしの問題だ、おれの問題だと親が気づくべきなんですが、でもそれは責任とかいうんじゃなく、業みたいなものだから、しかたないと考えるしかないんですよ。金銭的な要求には応じません。でないと共倒れになります。ただ目線を低くして、この子の見ているものを見、考えていることを考えてみます。これまで、たぶん本当に直視してはこなかったのではないか。目をそむけてきたのではないか。親が死んだら、後は野となれ山となれ。親の望んだものとは違うかたちでしょうが、この子はこの子なりに生きていきます。3フォーラム通信2019春号60代男性退職後・求職活動中先日、定年をむかえました。まだまだ元気で、時間もたっぷりあるので、仕事を探しはじめましたが、求人を見ると今までと全く違う業種で、賃金もかなり低く、やる気になれない仕事ばかり。踏み出せません。悔しさも、もどかしさも、よくわかります。でも、とりあえず踏み出して動き出さないと先に進めません。踏み出す足を止めているのは、あなたのプライドです。今、プライドをかなぐり捨てておかないと、さらに老いたとき、世話をされる立場に移行することがうまくできません。今までの人生の総括だの結果だのと考えず、これからの第一歩と思ってください。今の生き方が、どう老いるかどう死ぬかにつながっていきます。捨てるものはプライド。持つものは柔軟性。それができれば、賢い老人になって、人の差し伸べる手を、感謝しつつ受け入れて、いきいきと生をまっとうできると思うんです。


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