「フォーラム通信」2018年春号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2018年春号の特集は、「世の中は“息苦しく”なっている?」


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REPORT事業レポート横浜市男女共同参画センターの取組を紹介しますアニメ映画『アリーテ姫』上映会+片渕須直監督トークだれの手にも思い描いたことを実現する力がある。待っているだけじゃないお姫様の物語。10月29日(日)、フォーラムまつりのホールイベントとして映画『アリーテ姫』を上映しました。『アリーテ姫』は、口コミの評判で異例のロングヒットとなった『この世界の片隅に』の片渕須直監督の初監督作品。構想から完成まで8年かかったそうです。上映後、片渕監督に『アリーテ姫』の制作秘話をお話しいただきました。 主題歌に込めた意味 最初に主題歌「クラスノ・ソンツェ」を紹介します。歌ってくださったのは、ロシア人のシンガーソングライター ORIGA(オリガ)さん。一昨年、残念ながら若くして亡くなりました。 ヨーロッパの言葉なのだけど、英語のように耳なじみのあるものでない歌にしたいと伝えたところ、ORIGAさんが、今はもう使われていない、古いロシアの言語で作詞してくださいました。戦いのなかで騎士たちが死んでいく、その血が流れた末にどうなるのか、ということが歌われています。 壁をひらひらと   乗り越えていく主人公 1981年にアニメーションの仕事を始めて以来ずっと、作りたいものがあってもなかなか実現に至らず、僕は世の中に大きな壁があるように感じていました。そんなとき偶然に『アリーテ姫の冒険』の新刊広告を見かけました。大きな壁をひらひらと乗り越えていく主人公が登場するよ、と書いてあったような印象を受けました。励まされるような気持ちがして、どんな人物だろう、いつか僕も映画で描けるといいな、とぼんやり思ったのです。 1992年、僕はアニメ制作会社のスタジオ4℃にいました。『魔女の宅急便』でスタジオジブリに集まったスタッフが仲間内で立ち上げた会社でした。ある日、田中栄子プロデューサーから『アリーテ姫の冒険』を映画化するから監督をしてみないか、と声をかけていただきました。この作品はフェミニズム童話といわれているから、女性のプロデューサーである田中さんのところに話が来たのだと思いました。男の僕が監督をしても大丈夫でしょうか、とたずねたら、その分違った視点で考えられるんじゃないかな、と言われました。考えるのに、6年かかりました。 アリーテ姫とすずさんは似ている 原作をはじめて読んだとき、僕の解釈としては、アリーテ姫はすごく運に恵まれた人かもしれない、と思ったのです。姫が大きなことをしなくても、敵の方が自滅していくから。作者のダイアナ・コールスさんは、必ずしもそんなアリーテ姫を肯定していないんじゃないかと。最後にそんなアリーテ姫が否定される逆説的な話なのだな、と受け取ったのです。実際のところをあらすじ:中世のとある城塞都市。アリーテ姫は城の小部屋に閉じこもり、結婚するまでその身を清く守ることを求められていた。しかし生きることの意味を考えた姫は、ある日、古文書を読み解いて、自分の可能性にかける旅に出る。『アリーテ姫』 監督・脚本:片渕須直原作:ダイアナ・コールス『アリーテ姫の冒険』プロデューサー:田中栄子音楽:千住明声の出演:桑島法子、小山剛志、高山みなみ他製作年・国:2000年、日本ⓒARETEPROJECTPROFILE片渕須直 アニメーション映画監督。1960年生まれ。監督作品として『アリーテ姫』、『マイマイ新子と千年の魔法』など多数。最近作『この世界の片隅に』は国内外で数々の賞を受け、ロングランが続いている。フォーラム(戸塚)フォーラム通信2018春号 12


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