「フォーラム通信」2023年冬春号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2023年冬春号の特集は、「私、の痛み~痛みのジェンダー・ギャップ~」「家庭科教師で野球部監督で」。連載は「地球で行きてる私たち」。


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与されるまでの時間が長いという統計もあるそうです。特に薬物中毒だと医師に疑われやすいアフリカ系アメリカ人の患者は、鎮痛剤を投与される確率が白人患者よりもいっそう低くなるのだそうです。◆女性特有の症状の理解が乏しい「知識ギャップ」もうひとつの「知識ギャップ」とは、人体の研究がおもに男性を対象に行われているために、女性の身体に関する知識が欠如しているという問題です。わかりやすい例が心臓発作で、よく知られている症状は「鋭い胸の痛み」なのですが、女性の場合は首や肩の痛み、吐き気、疲労感、立ちくらみといった症状として現れやすいのだそうです。女性特有の症状が知5歳以下られていないために、5の女性患者は、心臓発作を起こしていても家に帰される率が平均的な患者の7倍も高いという統計が本書で引用されています。また、新しい薬や治療法などの有効性を確認する臨床試験から長らく女性が排除されてきたことも、近年問題視特集1私、の痛み〜痛みのジェンダー・ギャップ〜prole堀越英美ほりこしひでみ1973年生まれ。文筆家。早稲田大学第一文学部卒。著書に『エモい古語辞典』(朝日出版社)、『女の子は本当にピンクが好きなのか』(河出文庫)、『不道徳お母さん講座』(河出書房新社)、『スゴ母列伝』(大和書房)など、訳書に『自閉スペクトラム症の女の子が出会う世界』(河出書房新社)、『だからわたしはここにいる』(フィルムアート社)、『ギタンジャリ・ラオSTEMで未来は変えられる』(くもん出版)、『ガール・コード』(Pヴァイン)など。されています。たとえばアメリカでよく使われているある睡眠薬は、女性に対して効きすぎるために居眠り運転を引き起こしやすいことが発覚し、女性の推奨容量が半減されたということがありました。新型コロナウイルスワクチンも、当初は妊婦が臨床試験から除外されていました。看護師や店員など、ウイルス感染リスクの高いエッセンシャルワーカーは圧倒的に若い女性が多く、さらに妊婦は重症化リスクが高いのに、安全性データが欠けたままワクチンを接種していいのかどうか悩んだ女性も多かったといいます。◆痛みが美徳とされやすい日本日本は妊産婦死亡率が世界的にみて低い国で、国民皆保険制度もあり、その点ではアメリカに比べて恵まれています。とはいえ、日本独特の問題もあります。著者は日本版まえがきで、日本における無痛分娩の実施率の低さについて触れています。著者はこの原因を、日本では母性と自己犠牲が結びつき、「出産時の痛みを母性への通過儀礼として重要視している」ためだとしています。訳者の私自身、最初に妊娠がわかった時、男性産科医に無痛分娩にしたい3フォーラム通信2023冬春号


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