女性の仕事・起業・心とからだの健康支援・DV相談・セクハラなど性差別の申出・パソコン講座、子育て支援等の事業、施設貸出を行っている横浜市の男女共同参画センターです。

女性への暴力

支援者・体験者のメッセージ

心の傷は成長に変えられる
NPO法人レジリエンス

起きたことは変えられないけれども、つらいできごとを自分がどうとらえるかは変えられる。とらえなおすことで、人は成長していくことができる。
このような考え方に基づいて、私たちはDVなどで傷つき一時的に自分が本来持っている力(レジリエンス)が見えにくくなっている女性のためのサポートを行っています。DVのサポートを「予防」「介入(被害者の保護など)」「その後の心のケア」と3つに分けたとき、日本で不足しているのは「その後の心のケア」の部分だと思います。私たちが2005年から男女共同参画センター横浜と協働で行っている「DV・トラウマからの自己信頼回復講座」(12回連続)は心のケアをテーマに、様々な角度から回復を目ざしているものです。米国で数多く流通しているワークブックから選んで翻訳し、日本向けに独自に編み出した講座で、実施しながら不断に手直しを続けています。

講座には毎回50人もの参加があり、協働によって必要な方に情報がいきわたっていくのを感じています。参加した女性からは「ここに来るとほっとする」「安全だと感じられてうれしい」「"こうあるべき”という日常の緊張がとけて眠くなることも…」「自分を楽しませて(楽しんでも)いいんだ、と気づいた」という声をよく聞きます。
また、「予防」の意味では高校などにデートDV予防の出張講座などを行っています。被害に遭っている人だけでなく、まわりにいる友だちに情報がいきわたることで本人に適切なサポートが得られるようになります。どれも自己尊重感を大切にしたプログラムです。

心の傷は目に見えないので大したことではないと思われがちです。そうではない。社会がもっと敏感になって、本人の声を信じてほしいのです。女性が自分に合った色々な方法で、自分の力を取り戻せるように。私たちレジリエンスはそのことを願っています。

児童相談所から見えるDV

DVを子どもが目撃することが、子どもに多大な心理的影響を与えることをご存知ですか? 日本でも平成16年の児童虐待防止法の改正で、子どもがDVを目撃することが心理的虐待であると定義されました。
DVの目撃やDVが子どもに与える影響としては、

1.最も頼れるはずの親の暴言や暴力を目の当たりにすることで人との信頼関係の形成が阻害される恐れがあること
2.親が暴力で威圧するやり方を子どもが学習し、他者を暴力で威圧するようになること(特に男子)
3.女子の場合は対人関係で受身にまわる傾向があり、抑うつや性格の内向化などを起こしやすいこと
4.DVを受けているお母さんも父親からのDVを避けるため、子どもを強く叱責してしまったり、
お母さんにも強いストレスがかかりその結果、こどもを虐待してしまうことがあること
5.お母さんがDVを受けることで抑うつ的となり、子どもの養育が十分できなくなること


などがあげられます。
しかし、子どもへの悪影響があることがわかっても、それをDVの加害者に説明することは、その後のDVが激しくなる恐れを考えると、慎重に対処する必要があります。お母さんと子どもの安全を確保しながら、DVに対応していくためには、児童相談所のかかわりだけでは難しく、区の女性相談や、男女共同参画センターの相談室などとも協力しながら、最もよい方法を考えていくことが必要です。

(横浜市南部児童相談所 医務担当係長・精神科医 田崎みどり/「フォーラム通信」2008年新春号より転載)

相談することは弱者ではなく、新しい道に踏み出すこと
石川結貴(作家。著書に『ブレイク・ワイフ』『誰にも言えない夫の暴力』など)

取材する中で私は多くの女性たちに会ってきました。その中で印象的だったのは“しごとって一歩踏み出せば見つかるんですね”“たとえアパートでも、大の字になって安心して眠れるのがこんなに気持ちがいいことだったなんて”という声でした。

いっぽうで“子どもの受験のためには”とか“貧乏になるのはがまんできない”という声もあります。が、子どもに母のあきらめを日々伝え、“力のある者にはかなわない”と萎縮させ、絶望を植えつけていないか、心配になります。

なんでも完璧にしようと考え、失敗を恐れて進めないのは残念です。そうではなく、“これだったらできるかも”というところから始めていけたらと思います。相談することは弱者になってしまうことではなく、新しい道に踏み出すことなのですから。

逃れてきた女性や子どもを地域で見守って
阿部裕子(NPO法人「かながわ女のスペースみずら」事務局長)

児童虐待の背景には妻への暴力が隠れていることが多いです。うつや不眠、パニックなどの症状に悩む女性もたくさんいます。女性シェルターでは傷ついた子どもたちにもたくさん出会います。あまりにも無表情で言葉も発しない幼児、キレたり暴れたりする男の子、じっと耐えて母親の見守り役になる女の子。家の中で日々起こる暴力を小さな子どもたちが緊張しながら見ているんです。自分を責めないで! そして子どものためを思うなら、まず相談をしましょう。暴力は犯罪です。殴る夫は職場ではそういう行為はしない、家庭の中で妻を殴る(または言葉で傷つけ続ける)という方法を“選んでいる”のです。

横浜市は女性たちにとって先進都市です。全国でどこより早くシェルターをつくってきて、住まいのあんしん入居制度も就労支援もあって、行政との連携も比較的うまくいっています。でも家を出た女性がすぐに生計費を稼げるわけではありません。失われた時間を取り戻す時間、身も心もゆっくり休む時間も必要ですね。子連れで逃れてきた母子を地域のみんなであったかく見守って、必要なときに必要な援助をできるようにしたいですね。

気づきにくい“精神的暴力”(モラルハラスメント)

ようやく、子どもたちとの暮らしを楽しむ余裕が出てきたなぁ、と感じるこの頃。久しぶりに会う人に「雰囲気が変わったね」「穏やかな顔つきになったね」といわれます。
2人の子を連れ、家を飛び出して3年半。夫は家の中で私と子どもたちを、精神的に支配していました。子どものオモチャから、どのテレビ番組を見るか、といった細かいことまで夫の気に入らなくてはならない、息の詰まるような生活。離れた直後、私も子どもも自分で何かを選ぶということができませんでした。たとえば「何が食べたい?」と子どもに聞いても、わからないのです。

家を出た後は、慣れない法的手続きに戸惑い、緊張し、ひとり親としてやっていかなくては、という責任感に押しつぶされそうになりました。離婚が成立してホッとしたところでPTSDの症状がひどくなり、自分が通院。やれやれと思ったら、今度は子どもたちが学校へ行けなくなったり身体症状が出たりで、そのケアに走り回る日々でした。

けれども、この3年半の苦労は建設的な苦労だったと思えます。夫の顔色をうかがいながら、私さえ我慢すればと心を殺して1日1日を過ごしていた頃の苦労とは違います。
精神的暴力(モラルハラスメント)は外から見えにくい、また、被害を受けている人にとって気づきにくい暴力です。けれどもその影響は、身体的暴力と同じように、深い傷を残します。その傷がきれいに消えることはなくても、今は二度と新しい傷が作られる心配はない。私は子どもたちといっしょに、少しずつ新しい良い体験を重ねていくことで元気を取り戻し、「自分の人生」を生きていきたいと思っています。(由理子)


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